塾のペースに流されすぎない

塾に通っていると、どうしても塾のペースが受験勉強の中心になります。授業があり、宿題があり、確認テストがあり、組み分けテストがある。その流れに合わせていると、勉強は前に進んでいるように見えます。

もちろん、塾のカリキュラムには大きな意味があります。単元を順に学び、演習量を確保し、全体の中での位置を知る。これは受験勉強の土台として必要なことです。

ただ、芝を志望するのであれば、塾のペースにそのまま流されすぎないことも大事です。塾の進度と、芝に向けて仕上げるべき力は、必ずしも同じではないからです。

塾のペースは、志望校別に作られているわけではない

集団塾のカリキュラムは、多くの受験生に対応するために作られています。さまざまな学校を受ける子どもたちが同じ授業を受け、同じ宿題をこなし、同じテストで比べられます。

ですから、塾のペースに乗ることは大切ですが、それだけで芝の準備が完成するわけではありません。

芝の入試では、極端な難問ばかりが並ぶというより、基本的な力を正確に使い、問題文をていねいに読み、条件を整理して、落ち着いて解き進める力が求められます。

算数でも、大問数だけを見ると多すぎる印象はないかもしれません。しかし、小問を含めると処理すべきことは少なくありません。一つひとつの問題を雑に扱うと、取れるはずの点を落としてしまいます。

つまり、芝では「難しい問題をどんどん先に進める力」だけでなく、「取るべき問題を落とさない力」が大切になります。

塾の勉強で足りなくなりやすいのは、戻る時間

塾の勉強は、どうしても前へ前へと進みます。今週の単元が終われば、来週は次の単元。確認テストが終われば、次は組み分け。そうやって、受験勉強全体は動いていきます。

その中で削られやすいのが、「戻る時間」です。

間違えた問題をもう一度読む。なぜその式になったのかを考える。問題文のどこを見落としたのかを確認する。答えは合っていたけれど、解き方が危なかった問題を見直す。

こういう時間は、派手ではありません。新しい単元を進めるわけでもありませんし、たくさんの問題を解くわけでもありません。

しかし、芝を目指す子にとっては、この戻る時間がとても大事です。

間違いの原因が分からないまま次へ進むと、同じ種類のミスを繰り返します。読み落とし、条件整理の甘さ、計算の雑さ、設問への答え方のずれ。こうしたものは、量をこなすだけではなかなか直りません。

塾のペースに乗りながらも、ときどき立ち止まって、自分の解き方を点検する。その時間をどこかで確保する必要があります。

組み分けの点数と、芝への適性は同じではない

組み分けテストの結果は気になります。クラスが上がるか下がるかは、子どもにとっても保護者にとっても大きな出来事です。

ただ、組み分けの点数だけで、芝への準備が順調かどうかを判断するのは危険です。

組み分けテストは、広い範囲から出された問題を、限られた時間で処理する力を見るものです。一方、芝の入試では、その学校の出題に合わせて、基本をどう使うか、問題をどう読み切るか、取るべき問題をどう確実に取るかが問われます。

塾の成績が良くても、芝の問題になると点が安定しない子はいます。逆に、塾のクラスが最上位でなくても、ていねいに読んで、確実に積み上げる力が育っていれば、芝の問題に合ってくる子もいます。

ですから、組み分けの結果は一つの目安として見ればよいのです。それを受験勉強全体の判断基準にしてしまうと、志望校対策のタイミングを失うことがあります。

芝対策は、特別なことを大量に足すことではない

芝対策というと、すぐに過去問をたくさん解くことを考えるかもしれません。もちろん、時期が来れば過去問演習は必要です。

しかし、学校別対策は、過去問を何年分解いたかだけで決まるものではありません。

むしろ早い段階では、普段の勉強の中で、芝に必要な力を意識しておくことが大切です。

問題文を最後まで読む。条件を整理する。途中式を残す。答えを出したあとに、設問に合っているかを確認する。間違えた問題について、なぜ間違えたかを一言で言えるようにする。

こうしたことは、特別な教材を用意しなくても始められます。塾の問題を使ってもできます。大事なのは、ただ終わらせるのではなく、解き方の質を見ることです。

芝のための準備は、塾の勉強とは別に大量の課題を増やすことではありません。今やっている勉強の中に、芝に向けた見直し方を入れていくことです。

家庭で見るなら、一問でよい

家庭で全部を管理しようとする必要はありません。むしろ、あれもこれも見ようとすると、親子ともに疲れてしまいます。

まずは一問でよいのです。

塾で間違えた問題、解けたけれど時間がかかった問題、答えは合っていたけれど途中が怪しい問題。その中から一問だけ選び、子どもに聞いてみてください。

「どこで迷った?」

「何を読み落とした?」

「この式は何を表している?」

「次に同じような問題が出たら、何に気をつける?」

親が長く説明する必要はありません。子ども自身が、自分の解き方を振り返ることが大事です。

この一問の見直しを続けていくと、ただ塾の宿題をこなしているだけでは見えなかった課題が見えてきます。雑に読んでいるのか、式の意味を分からずに書いているのか、計算の途中で急いでいるのか。そういう癖が分かれば、修正の方向も見えてきます。

塾は使うもの、流されるものではない

塾のペースに乗ることは大切です。受験勉強のリズムを作り、演習量を確保し、競争の中で自分の位置を知ることは、やはり必要です。

ただし、塾のペースがそのまま芝合格への設計図になるわけではありません。

塾は土台を作るために使う。芝に向けては、その土台の上に、ていねいに読む力、正確に処理する力、間違いを直す力を積み上げる。

この分け方が大事です。

今の時期に必要なのは、塾をやめるかどうかではありません。塾の宿題を増やすことでもありません。塾の勉強に流されすぎず、芝に必要な力を見失わないことです。

毎週一問でもよいので、戻る時間を作る。解き方を確認する。問題文に戻る。間違いの原因を言葉にする。

その積み重ねが、芝に向けた本当の準備になっていきます。

個別の添削や指導が必要な場合は、邦学館 個別ワークスをご利用ください。