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海城は「伝える」と「伝わる」を分ける

「伝える」と「伝わる」は同じではない。海城の中学一年生が受ける安全ワークショップでは、この小さな違いを学校生活の問題として扱います。2026年度の第2回は、まさに「伝わる≠伝える」がテーマでした。

安全というと、防犯上の注意や禁止事項を覚える話になりがちです。しかし海城のワークショップが考えるのは、学校や登下校の時間を、互いに安心して過ごすにはどう関わればよいかということです。防犯活動の専門家、演出家、俳優を講師に招き、学校はこれを「快適を作るためのコミュニケーション」と説明しています。

俳優の芝居には、本人は挨拶をしたつもりでも相手には届いていない、といった場面が置かれました。同じ言葉や行動でも、受け取り方は一つではありません。説明を聞いて正解を覚えるのではなく、場面を見て意見を交わすところに、この授業の特徴があります。

後半には、三人組のうち二人が目を閉じ、一人が周囲を確かめながら案内する活動もありました。安全に動くには、案内する側が話しただけでは足りません。相手がどう受け取ったかまで確かめて、初めて三人が動けます。抽象的な「思いやり」を、身体を使う場面まで下ろしているのです。

海城は、演劇の手法を中一の安全ワークショップだけでなく、中二・中三のコミュニケーション授業にも取り入れています。安全教育を一度の注意で終わらせず、立場を替えて考える練習へつなぐ。ここに、対話を学校生活の中で育てようとする海城の考えが表れています。

海城中学高等学校「安全ワークショップ②」/海城中学高等学校「海城について」

海城社会、偽文書にも価値がある

史料に嘘が書かれていたら、その史料にはもう価値がないのでしょうか。2026年度一般入試①の海城社会は、最後の二問でこの考えをひっくり返します。

問8で扱われたのは、滋賀県湖南市の文化財に指定されていた絵図です。室町時代の寺院を描いたものとされてきましたが、江戸時代後期に作られた「椿井文書」と呼ばれる偽文書の一つだと指摘されました。そこで市が文化財指定の解除を検討すると、偽文書だと指摘した歴史学者が、今度はその対応を批判します。

偽文書なら、室町時代の出来事を確かめる材料にはなりません。しかし、それで役目がなくなるわけではない。誰が作ったかが分かり、同じ作者による文書が数多く残っていれば、江戸時代後期の人々がなぜ嘘の歴史を必要としたのかを考える史料になります。書かれた内容ではなく、作られたこと自体に価値が移るのです。

設問は、この違いを本文と四つの資料から拾い、180字以内で説明させます。偽物だから捨てる、という常識のままでは答えられません。どの時代の何を知るために使うのか。史料を見る位置を変えなければならない問題です。

私は、ここが海城社会らしいと思います。史料の言葉を覚えるだけでなく、その史料が残された背景まで考える。嘘だと見破ったところで終わらず、その嘘から何が分かるかを問うています。

海城中学高等学校「2026年度一般入試① 社会」

海城理科、室温二十度を条件に戻す

同じ電圧で、同じ時間だけ水を温める。それなら上がる温度も同じ、と考えたくなります。2026年度一般入試①の海城理科は、電熱線を扱う大問の最後で、その考えを一度止めました。

問5では、室温二十度の部屋で、三十度のコップと水を五ボルトで千秒間加熱すると三十四度になりました。電熱線が発した熱のすべてを受け取る理想の場合と比べ、コップと水が得た熱は八十%です。ここまでは、周囲へ逃げた熱を数字にする問題でした。

続く問6では、電圧も時間も室温も変えず、初めの温度だけを十度にします。電熱線による上昇だけなら四度ですから、答えは十四度に見える。しかしコップと水は、今度は室温二十度より冷たい。空気へ熱を渡す側ではなく、空気からも熱を受け取る側になります。

公式解答は「十四度より高い」。理由の空欄は、問5では空気から「熱をうばわれる」のに対し、問6では「熱を得られる」です。覚えた公式が増えたわけではありません。初めの温度が室温をまたぐと、周囲との熱の移動が逆になる。その一つの違いを、前の実験結果へ戻して考えます。

私は、この結びが海城らしいと思います。計算で十四度を出したところが終点ではない。大問の初めから積み上げた関係を使いながら、最後に現実の条件を戻す。数字が合っていても、室温二十度を置き忘れると答えは変わります。

海城中学高等学校「過去問ダウンロード」

説明より、土曜の放課後を開く

海城は、学校主催の一斉形式の学校説明会を開いていません。校長挨拶や学校概説、入試問題のポイントは動画で伝え、来校の機会は海城生や先生とのやり取りを大切にする「体験型のイベント」としています。

11月7日のミニ・オープンキャンパスでは、教室、アリーナ、グラウンド、Science Centerなどを順路に沿って回り、土曜日の放課後を見学します。見学時間は約60〜90分。教員や海城生に学校生活を質問できるコーナーも設けられます。

夏のオープンキャンパスには、特色ある教育の紹介、各教科の展示やプレゼンテーション、クラブの公開練習があります。一方、秋のミニ・オープンキャンパスが見せるのは、施設と土曜の放課後です。同じ来校行事でも、内容を小さくしただけではありません。説明を増やすのではなく、普段に近い時間を開いています。

講堂で全員に同じ話をする方が、情報は整って届きます。それでも海城は、説明できることは動画に分け、校内では人とのやり取りを残しました。私はここに、学校を知ることを、情報を受け取るだけの作業にしない海城の考えが表れていると思います。

11月7日は13時30分から16時までの二部制で、各回500組。対象は小学一年生から六年生まで、参加は一家庭三人までです。インターネット予約は10月13日12時に始まります。定員に達すると締め切られ、開催形式などが変わる場合もあります。

海城中学高等学校「オープンキャンパス」

公式動画は四教科を続けて確認する

学校別対策を始めると、算数の説明だけを確認して、すぐ過去問へ戻る子がいます。算数が気になるのは分かります。しかし、海城が用意している説明は算数だけではありません。

海城は2026年8月3日、学校説明動画を2027年度版に更新しました。校長挨拶、教育の特長、生活指導、学習指導に続き、「入試問題のポイント」として国語、算数、社会、理科の動画が公開されています。

まず教育や学校生活の説明を確認し、その後に四教科を続けて視聴すると良いでしょう。海城は受験生向けページで、単純な知識の暗記や、型にはめた解法の詰め込みだけでは入試に対処しきれないと説明しています。教科別の技術だけを拾っても、学校の考えとはつながりません。

視聴後に長い感想を書く必要はありません。学校の説明と今の勉強で違っていたことを、受験生本人が各教科一つだけメモしておきましょう。次の過去問では、それを自分で確かめれば良いのです。

親が動画の内容を教え直したり、課題表を作ったりする必要はありません。四教科と学校生活を一緒に確認したうえで、本人が何を直すかを決める。それが学校別対策のスタートにつながります。

海城算数、小問で止まる一題

海城の算数を解いた子が、「小問は急いでやった」と話すことがあります。けれども問題用紙を見ると、計算はすぐ終わっているのに、角度の問題へ線を何本も引いている。整数の問題では、同じ数を何度も試している。小問集合全体が遅いのではなく、一題だけで時計が進んでいるのです。

2023~2025年の海城算数では、冒頭に小問集合が置かれています。計算、割合、整数や数の条件、角度、図形などが並び、その後に図形、場合分け、規則性、立体などの大問が続きます。後半は図や表を作りながら考える場面もあります。小問一題に粘った数分が、後半の手を動かす時間を削ります。ここは得点差が出やすいところです。

過去問では、小問集合にかかった合計時間だけでなく、どの一題で止まったかを見ます。小問を終えるたび、問題番号の脇へ開始から何分たったかを小さく書いておくと、一題ごとの時間がわかります。毎回の練習で行う必要はありません。初回と、直したあとの二回だけでも十分です。

時間がかかった問題は、正解でも途中の紙面を確認します。計算なら、式を狭い場所へ詰めて書き、同じ行を何度も見直していないか。割合なら、「どの量を1とするか」が書かれているか。整数なら、試した数が縦に残っているか。図形なら、与えられた角度や同じ長さを図へ写してから考えたか。子どもが困っている場所によって、直す作業は違います。

次の演習では、考え方が浮かばない問題に印をつけ、いったん先へ進みます。戻るときは、何も書けなかった問題より、式が一本ある問題や、図へ数字を入れた問題から見直します。入口が紙に残っている問題のほうが、短い時間で答えまで届くことがあるからです。解き直しでは、飛ばした判断が遅すぎなかったかも一緒に考えましょう。

家庭で見つけやすいのは、数字の写し違い、途中式の詰まり、試した数を残さない癖です。一方、同じ分野で何度解いても最初の式が出ないなら、その場で単元全部をやり直すと直しが長引きます。問題番号と、どこで止まったかを記録し、別の日の課題や先生への相談に分けてもよいでしょう。海城の小問集合では、「もっと速く」ではなく、時間を失っている一題と、その紙面を探すところから始めましょう。

海城算数、追加条件を囲む

海城の算数を直していると、(1)は解けているのに、(2)で加わった一文を使わないまま計算していることがあります。本人は問題文を読んでいます。ただ、(1)と同じ流れで手を動かしたため、「ただし」のあとを読み過ごしているのです。

2023〜2025年の海城算数では、小問集合のあとに大問が続き、その後半で条件を加えて考えさせる構成が繰り返し見られます。(1)で使った考え方が役立つ一方、まったく同じ問題が続くわけではありません。途中から何が加わったのかを見失うと、計算が合っていても答えはずれます。

過去問では、後半で新しく加わった言葉だけを四角で囲んでみてください。することはこれ一つです。(2)の文章を全部囲むのではなく、(1)にはなかった部分だけを囲みます。

たとえば数を並べる練習問題で、(1)では自由に並べ、(2)では「同じ数を続けて置かない」と加わったとします。この場合は、「同じ数を続けて置かない」だけを囲みます。式や場合分けを書く前にその四角を見ると、(1)と同じ数え方のままでよいのかを確かめられます。

後半へ進んだ子どもの目は、「何通りですか」「長さを求めなさい」といった末尾へ向きがちです。その少し前にある一文は、読んだつもりで通り過ぎやすいものです。囲みがあれば、答えを出したあとにも「この言葉を使ったかな」と戻れます。きれいな印でなくて構いません。

直しで読み落としが見つかっても、すぐに関連単元を広くやり直すとは限りません。翌週に同じ大問を開き、追加された言葉を囲めるかだけを見ます。今日は海城の大問を一題開き、後半で増えた言葉だけを四角で囲んでみてください。