一年かけて書く中学三年の卒業論文

夏休みに提出するのは、完成した論文ではありません。本郷では中学三年生が約一年をかけて卒業論文を書きます。夏の原稿は、その途中にある初稿です。

一学期に担任と相談しながらテーマを決め、夏休み中に初稿を書き上げます。返ってきた添削をもとに、冬休み中に清書し、三学期の初めに最終提出。一つの文章が、三つの季節を通って形になります。

長く書けばよいわけでもありません。学校は「執筆要項」を配り、引用の方法や注の付け方まで細かく示しています。調べた内容と自分の考えを分け、初めて読む人にも伝わるように組み立てる。好きなことを紹介する作文とは、そこで違ってきます。

優秀作は表彰され、学校紀要の「塔影」に掲載されます。ただ、私は賞より、初稿が一度返されるところに意味があると思います。最初に書いたものを完成品にせず、指摘を受けて冬に書き直す。自分で選んだテーマだからこそ、うまく伝わらない部分から逃げずに向き合う時間になります。

十五歳の関心が、そのまま将来の進路になるとは限りません。それでも、問いを一つ選び、調べ、書き直し、他人へ届く形にする経験は残ります。中学三年の終わりに本郷が置いているのは、知識の量を測る試験ではなく、自分の関心を一つの論文にする一年です。

本郷中学校・高等学校「卒業論文(中学3年次)」