海城社会、偽文書にも価値がある

史料に嘘が書かれていたら、その史料にはもう価値がないのでしょうか。2026年度一般入試①の海城社会は、最後の二問でこの考えをひっくり返します。

問8で扱われたのは、滋賀県湖南市の文化財に指定されていた絵図です。室町時代の寺院を描いたものとされてきましたが、江戸時代後期に作られた「椿井文書」と呼ばれる偽文書の一つだと指摘されました。そこで市が文化財指定の解除を検討すると、偽文書だと指摘した歴史学者が、今度はその対応を批判します。

偽文書なら、室町時代の出来事を確かめる材料にはなりません。しかし、それで役目がなくなるわけではない。誰が作ったかが分かり、同じ作者による文書が数多く残っていれば、江戸時代後期の人々がなぜ嘘の歴史を必要としたのかを考える史料になります。書かれた内容ではなく、作られたこと自体に価値が移るのです。

設問は、この違いを本文と四つの資料から拾い、180字以内で説明させます。偽物だから捨てる、という常識のままでは答えられません。どの時代の何を知るために使うのか。史料を見る位置を変えなければならない問題です。

私は、ここが海城社会らしいと思います。史料の言葉を覚えるだけでなく、その史料が残された背景まで考える。嘘だと見破ったところで終わらず、その嘘から何が分かるかを問うています。

海城中学高等学校「2026年度一般入試① 社会」